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侵攻①  第十話  <創作> 銀色の風は炎の中で吹く

リテラが去って半時程経った頃、アスレイ達の次の仕事が言い渡されていた。

 

次は、この傷んだ街道脇の旧街道を通って、ルキソミュフィアに侵攻する部隊に合流して戦後処理を行う任務だった。

 

戦後処理?

よもや、ルキソミュフィアを攻め滅ぼして、敗戦国民となったルキソミュフィアの人々を隷属させようと言うのではあるまいな?とアスレイは想像したが、伝令による伝達は正に、その想像通りかそれ以上に残忍な指令だった。

 

大人しく従わない者は、全て皆殺し・・・・・?

 

目の前が一瞬暗闇に包まれて吐き気が催し、待機していた宿屋の壁に持たれかかった。

 

リテラが去った後すぐに、シーヴィルとアスレイは本隊の兵士専用の宿屋に移動して、そこで次の指令を待っていたのだ。

 

「くそ!」

 

壁を拳で打つも、ただ手が痛むだけで何が変わる訳でも無い。

結局、家柄が良かろうが竜族との混血だろうが関係無い。

 

ソルフゲイルと言う軍事国家に組する、一兵卒と言う立場が変わることなど無いのだ。

 

 

「落ち着けよ・・・・?」

 

シーヴィルが声をかける。

その瞳には、何故アスレイが怒りを覚えたり焦っているのかが理解できない~と言った色が見えた。

 

今までだって、他の国との対戦後の処理だって色々やって来たじゃないか?

一体それと今回とで何が違うんだ?

 

と言いたげな目をアスレイに向けた。

 

今まで、それが普通で、それが軍人としての仕事だから当たり前だからと言ってやって来た事だったのに、急に敵国を一掃するだけの簡単な任務に抵抗を感じる自分。

 

敵国の少女を救ったからなのか?

それともただの気まぐれなのか・・・・

考えれば考える程、頭の中がぐちゃぐちゃになって行く様な感覚が襲って来た。

 

「そんなに考えたって仕方がないさ、何せオレ達はソルフゲイルの軍人、目の前の敵を倒すのが仕事~。」

 

そう言いながら、シーヴィルは丈の短い軍服に袖を通した。

 

そして、

 

「そろそろ時間だぜ?アスレイ。腹を括れ。」

 

と言いながら、部屋を出て行った。

 

一人、部屋に残されたアスレイは、再び壁を拳で殴るともう、何も言わずに支給された真新しい軍服に袖を通し、部屋を出て行った。

 

壁には、拳から流れた血が花弁の様に散っていた。

 

 

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セクトシュルツの北西方向にソルフゲイルの追撃部隊は編成されていた。

 

セクトシュルツからルキソミュフィアの首都ルキソまでは、あの街道がまだ綺麗な状態で歩いても5日はかかる距離だ。

 

しかし街道は、度重なる戦闘で破壊され、見るも無残な状況になっていた。

とてもじゃないが、物資を載せた馬車を引いて走るのはかなり難しそうだった。

 

ただ、この街道が整備される前に使われていた旧街道を通れば、まだ馬車を引いての移動も可能だ。

旧街道は今でこそ主要な道ではなくなってしまったが、地理に明るい地元民や旧街道を愛用していた世代の中には、未だに旧街道で移動する者も多かった。

 

追撃部隊の指揮官は、ソルフゲイル御三家の一翼を担うアルヴェント家の長男、ユリウス・セルス・アルヴェントだ。

 

ユリウスはアスレイより2歳年上で年が近いと言う事もあり、幼少の頃よりよく遊ぶ仲間の様な関係を築いていた。

 

ゼフィリアのティアット家、アスレイのラングリット家、ユリウスのアルヴェント家を総称して御三家~と、ソルフゲイルの国民はもちろん、他国からも敬意と警戒の念を込めて称されていた。

 

幼少期はほがらかで明るく人当たりも良い少年だったユリウスだが、今から約10年前にソルフゲイルの南方のメレヴィ・メルヴィレッジと言う小国との小競り合いが起きた際に、当時のアルヴェント当主でユリウスの父シルヴァスが、メルヴィレッジの住民との交戦中に運悪く他界してからと言うもの、人格が変わってしまったのだ。

 

幼少期の人柄を知る者から見れば、まるで別人・・・・の様になってしまったあの日から、ユリウスはソルフゲイル軍の中でも群を抜いて出世と殺戮に没頭して行った。

 

~様に、アスレイには見えていた。

 

「よう、アスレイ。お前と同じ隊に配属されるのは久しぶりだな!」

 

そう言って、ユリウスはアスレイの頭をポンポンと叩いた。

 

「よしてくださいよ?一応、俺と君はもう上官と部下と言う間柄なんですよ?隊の規律が乱れますので、以後自重してください。

 

と言いながらアスレイは、ユリウスの手を払いながらそう言った。

 

 「おいおい?幼少の頃によく遊んだ仲だろ?気にすんな!何せこの隊の指揮官はこのオレだ!」

 

払いのけようとするアスレイの手を掴んで更に頭をグシャグシャにするのでもう、アスレイは抵抗するのを止めた。

 

この人に、何を言っても無駄かも知れないと思った。

 

「所で、先行している部隊はルキソミュフィアの何を狙っての進軍なんでしょう?」

 

アスレイは、今まで自分たちに伏せられてきたこの侵攻の本当の目的を訊いた。

 

自分にはその侵攻の理由を聞く権利があると思った。

 

するとユリウスは、

 

「何だ?まだ聞かされていなかったのか?・・・そうか~お前たち残党狩りとか戦後処理とか、後から来る部隊中心で配属されてたもんな~。いいぜ!教えてやる。ただ、まだ御三家だけの機密事項だ。」

 

と言って、アスレイの耳に口を近づけた。

 

アスレイは、ごくりと息を飲んだ。

 

「我がソルフゲイルの王様は、ルキソミュフィアの山間部にある、世界樹を守護する守護竜を狩れとのご命令だ。」

 

え・・・・?

 

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世界樹を守護する守護竜を狩る?

 

そんな事を考えた者は今まで居ただろうか?

 

この、蒼壁の大陸には4本の世界樹があって、そのうちの1本がルキソミュフィアにあるとされている。

 

ソルフゲイルでもその情報は確かなモノではなく、昔から4本あるかも知れない?程度のウロ覚えな事実でしか無かった。

 

しかし、世界樹は4本あってしかもそのうちの1本がルキソミュフィアにあると知れる様になったのはごく最近で、ルキソミュフィア侵攻の理由はもしかしたら世界樹の利権をめぐるものだとばかり思っていたのだ。

 

それが、世界樹の利権と言うのは隠れ蓑で、実際は世界樹を守護する竜を狩るのが目的だと言う。

 

「それって、正気の沙汰じゃない気がするんですが・・・」

 

アスレイは、恐る恐る本心をユリウスに呟いた。

それを聞いたユリウスは、

 

「オレも実際の所、御伽話か?と耳を疑ったさ。」

 

と言いながら首を横に振る。

 

「ただ、王にはどうも、守護竜を何とか出来る秘策がある様でなぁ~・・・・おっとこの先は、最重要機密だ。」

 

そう言って口をつぐんだ。

 

父を亡くしてからは戦場の鬼の様だと言う話を聞いていたアスレイには、まだ昔の面影が残る気さくな性格を垣間見ることが出来て少し嬉しい気持ちになったが、ソルフゲイル王の画策について話す姿は、これからの戦況を楽しんでいる様にしか見えなかった。

 

世界樹を守護する竜を狩る。

 

ソルフゲイル王は一体、狩った竜で一体何をするつもりなのか・・・・?!

 

その答えは王にしか分からない。

 

御三家と崇められる一族の者だとしても、直系の長子でもない自分には何も知らされることなど無いのだと、アスレイは自分の身の上を呪った。

 

ただ、そんな事を考えている今現在も、進軍と侵攻は続いている。

 

アスレイは、あの銀狼族の少女の屍を拾う様な事にはなりたくないと、心の中で願うしか無かった。

 

 

続く。

 

 

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