雨が降っていた。
その日はずっと雨が降っていたのだが、隣国の進軍を止める任務に赴いたリテラの隊は街道沿いで陣形をとっていた。
街道は、隣国と本国を繋ぐ一本道で、本来はもう少し整地されていたのだが度重なる攻撃で穴だらけになっていた。
「これでは、馬車も上手く走れまい」
リテラはそう思いながらも、街道沿いで佇んだ。
戦況は不利だった。
何せ相手は~隣国には黒竜の加護があり、一人の剣士に一頭の黒竜の使役が認められていたのだ。
本国にはそんな余裕も、他の竜との契約も存在していなかったので、隣国と戦が始まったと聞かされた時はもうその時点で敗戦が決まった様なものだった。
圧倒的な戦力差がありながら、何故戦に踏み切ったのかは知らない。
結局、ただの一兵卒に過ぎないリテラはただ、上官の命令に従うだけだった。
魔法も尽きた。
魔力も無い。
街道沿いに佇み、指定された時刻に来るはずだった仲間を待つ。
しかし、待てど仲間は来なかった。
多分隣国の部隊に討ち取られたのだろう。
これもまた、戦が故の宿命の様なものだろうと、リテラは己の生が消えゆく事に何ら躊躇は無かった。
仲間が散った今、自分が生きていて何の得があろうか?
そう思いながら目を閉じた。
静かに身体が街道沿いの水たまりに沈む。
そして、そのまま目を覚まさなかった。
続く。
<2話>
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