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【短編小説】前編

その年は酷い干ばつで、作物が枯れ、多くの人々が飢えた

種を蒔いても育たない作物が増え、次第に人々が飢えて倒れて行った。

 

雨乞いをしても何も起こらず、水源を探しに旅立った者は二度と帰らなかった。

井戸を掘って水を汲みだそうにも、井戸の水源の山でも木々が枯れ、緑の葉が一枚も無い状態になっていた。

 

そうしているうちに、村の住人の殆どが倒れた。

子供も大人も、老人も。

水も作物も無い状態が過ぎ、いつしか人が全く動かなくなっていった

 

 

遠くの町に出稼ぎに行っていた娘が帰還した。

娘は、馬に荷を載せて故郷の村に帰ってきたのだ。

道中、何度か村の方には行かない方がイイと言う忠告を受けたが、それには耳を貸さず、ひたすら村に向けて進んだ。

 

村の近くには昔、澄んだ綺麗な水が流れる小川があったのだが、その水が枯れてまるでただの道の様になっているのを見て、娘は村の異変がどれほどモノかを知った。

 

村に着くと、そこには飢えて倒れた村人の死体が累々と転がっていた。

村にはもう、生きている者は一人も残っていなかった。

 

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村の異変は唐突に起きた

この異変の原因は何だろう?と娘は思った。

近隣の、この村に着く前に寄った別の村では特に水源が枯れるなどの異常が見受けられなかったからだ。

 

また、何故かこの村の周辺だけが干ばつ状態になっているのも変だった。

まるで何者かが意図的にこの村だけ!滅ぼしたかの様な状態になっていたのだ。

 

娘は、とりあえず自分が生き残るためと、この村の変異を解明するために水源が生きている地域まで撤退した。

水源が生きている所は村からほど近かったので村の住人にも気付けそうだと感じたのだが、どうやら村からは誰もその水源に辿り着いていない状態になっていた。

 

もう、何年も人が入り込んだ様子が無かったのだ。

 

その、村からほど近い水源を拠点として、娘は村の異変の原因を探るための活動をし始めた。

まずは近隣の村や町で、この村にいつ頃から異変が起き始めたのを訪ねて回った。

 

最初に異変に気付いたと言う人が言うには、娘の帰還する約半年前には既に村にはほどんど水が無かったと言う。

娘の帰還する半年前の季節は梅雨時で、むしろ雨がよく降りやすく田畑も潤う時期だったので、娘はかなりその異変を訝しんだ。

 

これはもう確実に、何者かの介入があったとみて間違い無さそうだった。

 

また、同じ時期にこの村と取引があった商人の話では、村にあった井戸は全て枯れて水源の山の木々も枯れてしまい、もはや人が住み続けるには難しい状態になっていたとも言うのだ。

 

そんな状況になったら普通は村から出て行ったり移住を模索し始めるのが普通だと思うのだが、何故かその村の住人は頑なに誰も村の外に出てこなかったと言う。

と言うか、誰も村の外に出られなかったと言うのが正しいのかも知れない。

 

娘は、周辺から色々な情報を得るたびに、ある事を確信しつつあった。

それが多分、村が異変に襲われた原因に違いないと思ったのだった。

 

 

水神の祠

 この村の水源の山には、水神を祭った祠があった。

祠は簡素なものだったけれども、毎年供え物をして村の作物の豊作を祝ったりまた次の年の豊作を願ったりしたものだった。

 

その水神のお蔭かどうかわからないか、その村ではいつでも水が豊かで、近隣の村や町が干ばつに襲われたときでも井戸からはいつでも豊富に水が湧いていたと言う逸話もあった。

 

そんな村が一変して、今度は干ばつで滅んだ。

どう見ても水神が絡んでいると思った方が良さそうだと、娘は思ったのだ。

 

水神の祭ってある祠に辿り着くのは容易だった。

何故なら、山の木々もすべて枯れ、山肌が露わになっていたからだ。

 

祠は、何事も無かったかの様な佇まいをしていたが、ある一点だけ異常が見つかった。

それは、祠の奥にあるご神体が真っ二つに割れていたのだ。

 

この水神を祭る祠のご神体は、その昔、村を作った際に掘った最初の井戸の底から汲み上げられた水の中に入っていたと言う鏡で、鏡には澄んだ水をたたえた風景がいつも映し出されていたと言う。

 

その水鏡が、割れていた。

しかも鏡である部分は真っ黒に墨で塗り固められたかのようになっていたのだ。

娘は、この鏡が割れた事と鏡が真っ黒になった事が、村が滅んだ原因の一つに違いないと思った。

 

だが、誰が一体こんな事をしたのだろう?

その疑問を晴らさなければ、村の異変の原因を完全に解明したとは言い切れなかった。

それに、その鏡は本当にご神体だったのだろうか?と言う疑問も同時に湧いてきたのだった。

 

 

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 娘の話

そもそも娘は何故、出稼ぎに行っていたのか?と言う疑問が湧いてきた頃だろう。

 

実はこの娘、元々はこの村に立ち寄った旅芸人一座のの夫婦の娘で、旅芸人がしばらく滞在していた時に村の子供たちと仲良くなったのだ。

 

ある日、旅芸人の一座がそろそろ別の町に行くと旅立ちの準備を始めた。

村の人々は別れを惜しんで、旅立つ日の前日の夜にお別れの会を開く程だったそうだ。

旅芸人の一座も、割と長期間滞在していたこの村に愛着を感じ始めていたものも居たが、何せ旅をしながら自分たちの芸を見せる生業で生きて行く事を決めているので、村に残ろうと言う決心がつく者はいなかったと言う。

 

次の日の朝、旅芸人の一座は後ろ髪を引かれる思いで村を旅立った。

村の人たちも別れを惜しんだが、次の町での興行の成功を祈って送り出したのだ。

 

旅芸人の一座が去って何週間か経った頃、一人の女性が幼子を連れて村にやって来た。

女性は、旅芸人の一座に居た?様なまたは村に居た?かも知れない、見た事がある様な無い様な不思議な雰囲気の女性だったと言う。

 

その女性に連れられてきたのが、旅芸人の一座に居た少女だった。

一座の夫婦が大事そうにしていた子供だったのだ。

 

連れてきた女性に、この子だけどうしてココに?と村人が理由を尋ねようとした時、そこにはもう誰も居なかったと言う。

まるで、霞が消えるかの如く、女性の姿だけが消えていた。

そこには、連れてこられた少女だけが残されたと言う。

 

その少女が、この娘なのだった。

 

娘を旅芸人の一座から連れてきた経緯は分からないが、娘の記憶の底には恐ろしい光景が少し残っていた。

それは、旅芸人の一座にある時夜盗が襲い掛かって来たのだ。

 

夜盗は人の姿をしている魔物の様だった。

それとも人が魔物に堕ちてしまったのだろうか?

 

分からない。

分からないけど、自分はそこで死ぬのだと思ったのだ。

 

それからの記憶が曖昧で、気が付くと女の人に手を引かれて歩いていた。

そのまま連れて行かれた先に、あの村があったのだ。

娘は、連れて行かれた先がとりあえず知っている場所だったことに安堵して、自分の命が助かった事を喜んだ。

 

しかし他の家族や一座の仲間の姿は、あの夜以降行方知れずとなった。

 

 

 娘が遠くの町に出稼ぎに行ったのには理由があった。

行方知れすとなっていた旅芸人の一座が遠くのとある町に巡業に来ていると言う話を、たまたま村に立ち寄った旅人から聞いたのだ。

 

娘は居ても経っても居られなくなり、馬を駆って村を出た。

この時、出稼ぎに行くと一言告げただけで、着の身着のまま村を後にしたのだ。

 

娘が馬を駆って数日後、話に聞いた町に辿り着いた。

町は華やかで人も多く、村では見た事も無い食べ物や綺麗な服もたくさんあった。

話に聞いた一座もすぐ見つかり、娘は一座に話を聞いてみる事にしたのだ。

 

一座には、娘の居たあの一座に居た経験がある者、あの時野党に襲われて生き残った者が二人いた。

二人は、娘の顔を見るやいなや、懐かしさのあまり涙した。

そして、あの時何が起こったのかを語り始めた。

 

 

娘の秘密

あの晩、旅の一座は村から遠く離れた町の近くで夜を明かしていた。

もうすぐ次の町に入ろうか?と言う夜だった。

 

町の近くだから夜盗や野犬の心配はないだろうと思って、かなり気が緩んだ状態になっていた様で、町にも入っていないのに酒を酌み交わすものも居たと言う。

 

その時、気配を何も感じ取る隙も無く、突然闇の中から夜盗の様なものが現れた。

生き残った二人は、その時特に酒も飲んでおらず素面だったので、近くの町に助けを求めてひた走ったと言う。

 

助けを求めに行っている間は仲間が応戦していたが、助けを連れて戻るともう誰も生きていなかったそうだ。

ただ、娘だけが居なくなっていたので、その後四方八方を探したが全然見つからず、諦めて自分たちは別の一座でお世話になっている~と言う事を話してくれた。

 

娘は、当時まだ自分が幼過ぎて状況を見極められていなかった事を知って、やっと納得が行った。

ただ、連れ去ったものの正体が不明だった。

 

二人には、実はあの後謎の女性に連れられて歩いていて、いつの間にかあの村に連れて来られていた事を話すと、二人は途端に気まずそうな顔をしたのを娘は見逃さなかった。

 

もしかして、あの村で一座は何かやらかしてしまったのでは?と二人に問い詰めたのだ。

 

二人は、

「気を悪くしないで聞いてください・・・」

と前置きして、娘に話し始めた。

 

あの村に滞在中、娘に起きた悲劇を話し始めたのだった。

 

 

娘は、村の子供たちと仲良くなって、まるで昔から村に住んでいたかの様に過ごしていた。

その光景を村人も一座の面々も、それは微笑ましく見守っていたのだ。

 

ある時、娘は村の子供たちと一緒に水神の祠のある山の中で遊んでいた。

木の上に綺麗な鳥の巣があると言う話を聞いて、他の子供ら数人と木に登って遊んでいたのだ。

 

ふと、草履の鼻緒が緩んでいたのか、鼻緒が切れて娘の草履が脱げてしまった。

草履で木の足場に踏ん張っていた足は、落ちて行く草履に連れられる様に滑り落ち、娘の体も地面に叩きつけられた。

 

近くにいた子供が急いで大人たちを呼んだが、娘は息をしていなかった。

旅芸人の一座は、藁にもすがる思いで、近くにあった水神の祠で娘を生き返らせてほしいと懇願した。

 

すると、突然山に雨が降り注ぎ、その場にいたものが全員ずぶぬれになったと言う。

そして不思議な事に、息絶えていたと思っていた娘がまるで今まで昼寝でもしていたかのように起き上がり、その後も普通に生活できる様になった・・・・

 

と、二人は言ったのだ。

 

娘は、水神に命を分け与えられていた?

自分はあの時死んでいた?

じゃあ、あの時自分を村に連れて行った人は、もしかしたら水神?

 

色々な情報が娘の身体の中を巡って行くのを感じた。

娘は二人に礼を言うと、その場を離れた。

 

取る物も取らずに村を飛び出してきていたので、町の宿屋で住み込みとして働きながら、村に帰還する時に持って帰るお土産を買う資金を貯めた。

あまり長い時間は空けられないと思った娘は、半年ほど働いた後に村に帰還したのだ。

 

村を空けていた時間は半年ほどだったのにもかかわらず、懐かしい記憶や思いだけで帰ってきた村の光景は地獄と何ら変わらない状況になっていた。

 

それが、今の状況だった。

 

続く>

(4000文字ちょいで終わらなかったので、分けます)

 

 

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