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【短編小説】

気が付くと、深い森の中に居た

いつ、この場所に来てしまったのだろう。

アタシは気が付くと、普段は滅多に誰も入る事が無いと言う町外れの深い森の中に居た。

 

小さい頃はあとで怒られるのが分かっていても、何度も入り込んで遊んでいたあの森に、いつの間にか入っていたのだ。

 

アタシは確か、学校の図書室に居たはずなのに・・・

図書室で、委員会の仕事をしていたはずなのに、何故森の中に居るのだろうか。

 

 

高校に入学してから、いつも何者かに見られている感覚があった

何故だかわからないけど、高校生になってから誰かに見られている様な感覚を感じることが多くなった。

友達に話してみたら、ストーカー?とか変質者なんじゃないか?と言う答えしか来なかったが、そう言った人間の視線と言うよりは別の、動物の様な何かの存在を強く感じた。

 

もしかしたらコレが霊感と言うやつなのかも知れないと思って、学校の図書室や市内の図書館で色々な本を読み漁ったりもしたが、決定的な打開策を見いだせないでいた。

 

アタシの住む町は、かつてはベッドタウンと持てはやされた時代もあった町で、数多くの団地やマンションや一戸建てが存在している。

昔は自然豊かな町だった所を開発して、開発しまくってそう言ったマンションなどを建てて行ったのだと言う。

 

今は、当時住んでいた人も高齢化して行き、徐々に住む人が減ってしまい団地の建物一棟が全て空き家になっている所もあったりするので、最近ではベッドタウンじゃなくゴーストタウンじゃないか?とも言われ始めていた。

 

アタシの住んでいるのはそんな団地の一角の中に出来た新しいマンションで、団地をまた活性化させようとか古くなった棟からの移住を進めるために建てられた、代替住宅と言った方が良いだろう。

 

そんな新しめのマンションに住んでいるアタシは今、一人で住んでいた。

 

元はココより少し離れた場所にあった一戸建ての並ぶニュータウンと呼ばれる地域に住んでいた。

そのニュータウンは、山を切り崩して立てられていたので、地域によっては坂の傾斜角度がキツイ所もあったが、当時はニュータウンと言う響きが新しかった所為か多くの人がそこに移り住んだ。

 

そんなニュータウンからアタシが一人でマンションに住むようになったのは、理由がある。

これから、その理由を話そうと思う。

 

 

その日は季節外れの豪雨に見舞われた

ニュータウンが元々山を切り崩して作られている事は、多くの住人が知る所だった。

なので、住人の多くが大雨が降るたびに山崩れなどを警戒していたのは、当時幼かったアタシでも何となく理解していた。

 

ある晩、かなりの大雨がこの街に降り注いだ。

アタシは当時小学5年生で、テレビの前に座ってニュースの中継や実況を見て雨が通り過ぎるのを見守るしか無かった。

 

そんな時、住んでいる地区に避難勧告が出た。

アタシは、とりあえずその時大事だったものだけ持って、避難所に指定されていた公民館に向かった。

ニュータウンに住む別の小学生と一緒に、10人くらいで集まって共に避難所に向かった。

 

家から避難所に指定されていた公民館までは少し離れていて、その途中に町外れの森に続く分かれ道があった。

町外れの森には古い神社とたくさん並んだ鳥居があって、小さい頃は良くそこで遊んだりしたものだったが、最近は野犬が出るとかナントカで立ち入り禁止になっていた。

 

アタシ達は、避難所の公民館への道を間違って、森の中に入ってしまった。

どうにも風雨が強くて、公民館の方に近づこうとすると風で抑え込まれるような感覚を感じて、それで流される様に森の方に来てしまったと言った方が良いかも知れない。

 

とにかく、小学5年生の体がその風雨に抵抗できる程の重さが無かったのが、公民館にたどり着けなかった理由だとしか言えなかった。

 

そうして10人ほどで森の中に入ってしまったアタシ達は、しょうがないので階段を上って森の高台にある神社の社を目指した。

社はいつも誰でも入れるような状態になっていた事を森で遊んだことのある子どもたちなら知っていたので、そこで風雨をしのぐことにしたのだ。

 

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社には迷うことなく着き、簡単に中に入る事が出来た。

 

社に入って風雨をしのぎながら、少しだけある窓で外の様子をうかがっていた。

窓の外にはちょうどアタシ達が住んでいるニュータウンが見えたので、皆で街の無事を祈るしか無かった。

 

この話は後に聞いたのだが、避難所に向かったはずのアタシ達がなかなか到着しないので、ニュータウンの大人たちは非難もしないで四方八方を捜索していたらしい。

その時、ニュータウンの建設に携わったと言う人もかなり多く含まれていてたと言う話も後々になって聞いた。

 

とにかく、そんな事は露知らず、アタシ達は森の神社の社で静かに雨が通り過ぎて行くのを待つしか無かったのだ。

 

 

ふいに、雷が落ちる様な轟音が響いた

夜も更けてきた頃、アタシ達はもう眠くて寝ている子も多い状態になっていた。

神社の社に入ってからは、他の子たちと公民館に行こう!と言う話し合いもしたけど、今行っても多分辿り着けるか分からないから、この場でじっとしていた方が安全!と言う意見の方が勝って、それで社に残った感じだ。

 

ただ、3人だけ、どうしても公民館に行く!と言って聞かなかった彼らだけは、3人で手を取り合って社から去って行った。

アタシ達はかなり引き留めたけど、3人は揺るぎない決意の元、公民館を目指して階段を降りて行った。

その時の背中は、今でも忘れられない。

 

3人が迷わず歩いて行けたなら、そろそろ公民館に辿り着いたであろう?頃に、轟音が響いた。

どうやら、この地域に雷が落ちた様だった。

 

神社の社は元から電気が無いような薄暗い状態だったので、避難する時に使っていた懐中電灯で明かりを取っていたので、特に雷が落ちて停電になっても何ら影響は無かったが、公民館などの避難所や避難指定地域になっていない家の多くが停電して、かなりの影響が出たと思われた。

 

この時、雷が落ちただけなら良かったのだが、雷が落ちたのと同じくして別の災害が発生していた事を住民は気付いていなかったのだ。

 

アタシは、その光景を神社の社の窓から終始見ていた。

降りて行った3人の事が気がかりだったのもあったが、何より住んでいた家が無事でいるのかを見ていたかったのだ。

 

雷が落ちたのはニュータウンの避雷針なのだが、避雷針の許容量を超えた威力の雷が落ちた様で、避雷針はその役目を果たすことなく破壊されていた。

その所為で、地域一帯は停電状態になったのである。

 

また、雷の落ちた避雷針のあった場所が実は、地盤のかなめの様な場所だったらしく、雷の落ちた衝撃が地中深くにも伝わり、それが起爆剤となってあの災害が起きたらしい。

と、かなり後になって話を聞いた。

 

その災害は、真っ暗闇の中を駆ける魔物の様に人々に襲い掛かった。

 

 

全てが流された

土砂崩れが起きたのだ。

 

家々がまるで、砂場に置かれたおもちゃの家の様にことごとく流された。

流された先で別の家にぶつかって壊れた。

非常用の電源の確保が間に合わなかったのか、右往左往していた人々が逃げる間もなく飲み込まれた。

 

土砂は、ニュータウンの終わりにある川まで流れた。

 

その時もまだ、雨が降り続いていた。

 

アタシは、あの時真っ暗闇だったはずなのに何故か一部始終を見ていた。

もしかしたら神社の神様の力だったのかもしれない。

神様が、アタシの目を借りて見せてくれていたのかも知れない。

 

そうして、その晩、一夜にしてニュータウンが壊滅した。

死者は多数、行方不明者も多数。

そして、あの時公民館に行くと言って降りて行った3人も行方不明になっていた。

 

アタシは一夜にして、天涯孤独の身の上になった。

 

 

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神社から去る時、空には三日月があった

あの時の月夜を忘れる事が出来ずにいた。

と言うのも、三日月が神社の社の真上に止まったまま動かないで佇んでいたからだ。

それに、本当はあの日の夜は新月で、三日月が見える筈も無かったことを後に図書館に保管されている過去の新聞で知ったのだ。

 

あの三日月の正体は一体・・・・

その事も、頭の中でグルグルと巡っていた。

 

一夜にして崩壊したニュータウンは、その後色んなニュースで実は立地が良くなかったとか建設会社が~とか問題が出てきたのだが、家族を一瞬にして失ったアタシにはどーでも良い事だった。

 

あの後は近隣の養護施設に入って生活していたのだが、高校入学とともに施設を出て、新しく建ったマンションに入った感じだ。

このマンションでは、当時のニュータウンの住人には補助が出て住める仕組みになっていたので、アタシはその補助のお蔭で入居している感じだった。

 

そうして、高校生になったアタシは最近、何者かに見られている様な感覚を怪しむ生活を送っていたのだ。

 

その何者かが何なのかを調べるために、連日図書室で調べものをしていたのだが、いつの間にかあの神社のある森に来ていた。

アタシは、まだ学校から出てはいない筈なのに・・・・

もしかしたらコレが白昼夢とか言うものだろうか?とも思ったが、夢にしてはやたらリアルだった。

 

それと、景色は何となく昼間なのに空を見上げると何故か三日月が浮いている。

これは、やっぱり何者か?が仕組んだ別の世界なのかも知れなかった。

 

 

狭間の世界

空に浮かぶ三日月を訝しんでいると、神社の社の方から一人、誰かが歩いて来るのが見えた。

漆黒の髪。

赤い瞳。

少し時代遅れの様なセーラー服を着ている。

その人はアタシに、何かを話しかけてきた。

 

「生き残った貴方を、生き残れなかった者達が狭間に引きずり込もうとしている」

そう、その人は言った。

狭間?もしかしてこの、急に森になった事がそうなのだろうか?と考えると、

「そう、この世界は現実のあの森ではなく、亡者が作り出した幻影」

と言って、空を仰ぎ見た。

 

「私は、空からあなたを見守る事しか出来なかったのだけれども、この狭間の世界でなら全力で亡者の力を削ぐことができる。だから、惑わされてはいけない」

と言った。

空から?もしかしてあの三日月が彼女の正体なのか?

「亡者は、怒り狂ったかつての山神だったモノに浸食されて、魂を空に還す事が出来ないでいる。だから、貴方が亡者を導いて天に放ってほしいの。私はその間山神を抑えているから」

そう言って、右手を天にかざした。

 

え?

アタシが亡者を導くの?

でもどうやって?

そう思うと、頭の中にその方法が流れ込んできた。

 

そんな、簡単な事でイイの?

と、アタシは疑問に思いながらも、亡者を導くために一歩を踏み出した。

 

アタシは、この狭間の世界にある神社の社を目指した。

森は本物の森と同じ感覚で、草木が脚や手に絡み付きそうになったりしたけど、迷わず社に辿り着いた。

そして、後ろを振り返ると、無数の亡者が迫っていたことに気が付いた。

 

その中に、仲良く3人で手をつないだ小さな影もあった。

あの時、公民館に行く決意をして降りて行ったあの3人だ。

3人もまた、山神の呪詛に汚染されて現世に留まっていたのだ。

 

アタシは、さっき頭の中に入って来た事を、彼らに向かって叫んだ。

 

 

鎮めたもう、鎮めたもう

その御心は天に、呪いは地に置いて行きたもう

古き神よ、心鎮めたもう

呪いを、地に沈めたもう

天の三日月下弦の月、黄泉の入り口開きたもう

我はその旅路を、見届ける者なり!

 

 

アタシがこの言葉を言い終わるか終わらないかの瞬間、亡者の集団が空の三日月に向かって煙の様に立ち上って行った。

その姿はまるで、白い竜が天に昇っていく様にも見えた。

 

地に置いてきた呪い。

それが悪しきものに変化した山神の事だろう。

あの、セーラーの彼女は大丈夫なのだろうか?

アタシは彼女が残った場所に戻るため走った。

 

 

終焉

気が付くと、アタシはもう学校の図書室に戻っていた。

そして、ここ最近ずっと感じていた不穏な気配も無くなっていた。

 

あの気配は、天に還りたかった亡者の気配だったのだ。

あのまま亡者を導かなかったら多分、アタシも亡者の中に入っていたかもしれなかった。

 

あの後、山神を抑えると言っていた彼女の元に戻ると、彼女の傍らには小さなイノシシの様なシルエットの動物が居た。

もしかして、それが山神?と尋ねると、

「そう、これが本来の山神の姿。貴方が亡者を見送ってくれたお陰で元に戻す手間がかなり省けたわ」

と言った。

そして、

「あの時、あの雨の日に社に導いたのは私。あの時はこうするしか道が無かったの」

と言って頭を下げた。

 

いや!でも、そのお蔭でアタシは助かったし、それにむしろお礼を言うのはアタシの方!と、アタシもすかさず頭を下げた。

 

漆黒の髪。

赤い瞳。

昔のセーラー服に身を包んだ彼女は、

「また、社に遊びに来てね」

と言って、笑って姿を消した。

 

その後気が付くと、学校の図書室に戻ってきていた。

 

結局、彼女の正体は明確には分からなかったが、彼女が現れる時にはいつも空に三日月が浮いていたので、アタシは彼女の事をミカヅキの君と呼ぶことにした。

 

また、会えるだろうか?

いや、これから社に行けばきっとまた!会えるだろう。

 

 

<終わり>

 

 

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